研究内容



時間分解電子スピン共鳴法によるタンパク質・光活性有機固体膜の電子伝達機能

 当研究室では、光合成に代表される有機化合物による光エネルギー変換の根源的な仕組みを明らかにし、タンパク質による新規人工光合成の構築や新規医療診断法の開発、および有機太陽電池の構築を目指して研究を行なっている。 光合成タンパク質などの電子伝達系における初期過程では、光の吸収で高い軌道エネルギーに遷移した生体分子がその近傍の分子に電子か正孔を与える(光電荷分離)。 この時、各軌道上で電子対の電子が不足した不安定な分子対となり磁性を持つようになる。この電荷分離状態の磁気モーメントが外部磁場との相互作用や、中間体どうしの磁気作用エネルギーなどを生じることにより、入射する電磁波との共鳴現象が観測され、中間体分子の電子軌道に関する様々な知見を得ることができる。 このような磁気共鳴分光とレーザー光を基盤とする時間分解磁気共鳴測定を行い、様々な短寿命中間体を直接観測する。
 植物や光合成細菌を含むタンパク質複合体や有機薄膜太陽電池の光活性材料などを対象とし、電子スピン共鳴法を中心とした分光学的な研究を展開し、光による反応の直後に生成する不安定な中間体について、
1)分子の軌道の重なりの性質の解析
2)立体構造の解析
3)分子運動の解析
を行っている。当面の研究目標を以下に列記する。
1.人工的な光エネルギー変換を起こす、タンパク質複合体の開発と立体構造解析
2.ヒトタンパク質?薬物複合系のレドックス反応を利用した医療分野への展開
3.光合成光化学系およびバクテリア光合成反応中心における光エネルギー変換機構の解明
4.有機太陽電池による光エネルギー変換の分子機構解明
 当研究室では近年、量子論を駆使し、励起状態や電荷分離状態のスピン量子効果を解析する手法を独自に確立させており、電荷分離状態の立体構造解析と電子伝達機能を特徴づけることが可能となった。 この解析法を用いて、時間分解電子スピン共鳴法による電子物性および電子伝達機能の評価を以下のテーマで行っている。